トスカニーのラベルで知られるスーパータスカンワインは、一般的にトスカーナ州においてサンジョヴェーゼなどの土着品種のブドウではなく、カベルネ・ソーヴィニョンやカベルネフラン、メルローなどの国際品種のブドウを用いて作られているワインの名称であると考えられています。スーパータスカンには、サンジョヴェーゼなどが使用されている場合もありますが、ブレンドの主なブドウとしては使われていません。
一度はテーブルワインに属していたワインですが、今では高級で世界中のワイン愛好家の間でとても人気のあるワインになりました。どうしてこのようなことが起こったのでしょうか?一緒に見ていくことにしましょう!
起源
このワインのお話は、マリオ・インチーザ・デッラ・ロケッタというひとりの農学者から始まります。第二次世界大戦後、マリオと妻のクラリスはトスカーナ州にあるテヌータ・サン・グイドの私有地を取り戻すためにローマを離れました。先見の明があったマリオは、土着品種のサンジョヴェーゼではなく、この土地ではカベルネ・ソーヴィニョンやカベルネフランなどのボルドー地方のブドウ品種から質の高いワインを生産することができると確信し、その私有地にブドウ園を作りました。
初めてのボルドー風ワインは1945年に作られましたが、商業ベースでワインを造るようになったのは1968年になってからでした。カベルネ・ソーヴィニョン85%、カベルネフラン5%で造られるこのワインは「サッシカイア」と呼ばれ、今では大人気のプレミアムワインのひとつとなっています。
なぜ「スーパータスカン」なのか?
サッシカイアとその後醸造されたワインはイタリアの土着品種のブドウから造られていなかったので、当時のワイン法には合わず、最下級の「Vino da Tavola」つまりテーブルワインとしてしか販売することができませんでした。
それにもかかわらず、最初の商業ワインから10年後の1972年、サッシカイアは雑誌デカンターにおいて33もの競争相手を負かし、ボルドーブレンドワインの世界一に選ばれました。そして、テヌータ・サン・グイドがフランスのブドウを使用したワイン造りに成功したことに気づいた他のワイン生産者も、独自のワインを造り始めました。1974年には、国際品種を使用した、アンティノリ・ ティニャネロの初のビンテージワインがリリースされました。そして、これらの素晴らしいワインが次第にスーパータスカンとして知られるようになっていきました。
この時はまだ、イタリアのワインの格付けにおいて正式な等級が与えられていませんでしたが、1992年になってIGT(Indicazione Geografica Tipica)という等級が設けられ、スーパータスカンワインはテーブルワインからようやく昇格することができました。そして、現在、トスカーナ州では、ボルゲリDOCとマンマトスカーナDOCには国際品種のブドウを使用することが許されるようになりました。サッシカイアにはボルゲリ・サッシカイヤDOCという独自の等級が与えられています。
現代のスーパータスカン
現在、トスカーナ州のワイン生産者の多くは独自のスーパータスカンブレンドワインを醸造しており、世界中で最も人気のあるワインの一つとして知られています。多くのワインにはボルドーにサンジョベーゼまたはシラーがブレンドされており、まさにユニークなワインとなっています。フルボディで熟成に向いており、熟成が浅いとタンニンが強く、熟成が進むと濃厚でまろやかなワインに成長します。
熟したブラックフルーツやレッドフルーツに、ほんのりバニラやたばこ、シーダー、キャラメル、ベーキングスパイス、そしてドライフラワーの香りがします。それぞれのワインの香りはブレンドに使用されているブドウによって異なりますが、爽やかな酸味と海岸の近くで作らることにより加わるミネラル感が何とも言えない味わいをもたらします。
最も人気のあるスーパータスカン
このスタイルのワインの人気に火が付き成功したことから、トスカーナ州の多くのワイン生産者は独自のブレンドを作り出し、世界的にも認識されるようになりました。イタリアでは、ワインの名前はワインが造られた地域や使用したメインのブドウにちなんで名前を付けるのが習慣なのですが、これらのワインには、しばしば幻想的な名前が付けられました。最も人気のあるスーパータスカンは以下の通りです。
- サッシカイア 生産者:テヌータ・サン・グイド
- オルネッライア 生産者:フレスコバルディ
- ソライア 生産者:アンティノリ
- サッフレディ 生産者:ファットリア・レ・プピッレ
- カ・マルカンダ 生産者:ガヤ
- ティニャネロ 生産者:アンティノリ
- ルーチェ 生産者:ルーチェ・デッラ・ヴィーテ
- グラッタマッコ 生産者:コッレマッサーリ
スーパータスカンワインに興味はあるけれど、あまり高価なものは避けたいということであれば、ここに挙げたワインがおすすめです。個人的には、バンフィチェンティー トスカンの赤ワンが良いのではないかと思います。サンジョベーゼ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニョンがブレンドされており、この芳醇で万能なワインは初めての方にうってつけです。
結論
スーパータスカンワインは、この50年の間に等級のないワインから多くのコレクターが求める非常に高価なワインへと急成長を遂げました。長期熟成に向いているリッチで複雑な味わいのこのワインは、ボルドー地方やバローロのワインにも匹敵する素晴らしいワインになりました。
スーパータスカンワインを味わったことがない方は、ぜひ一度、お試しください。有名な生産者の多くは、同じスタイルで価格を抑えたセカンドラベルやサードラベルのワインも製造しています。もしかしたら、お気に入りのワインがまた一つ増えるかもしれませんよ!