中国市場において、抜きんでるための8つのヒント
多くのワインは、中国市場において未だに難しい状況にあります。現代の物流システムの発展と小売販路の細分化により、どの価格帯においても幅広い商品の選択肢が存在するような非常に競争の激しいワイン市場が形成されました。しかし、中国におけるワイン市場には、まだ成熟したワインの習慣を持たないワイン初心者が多くいます。中国における販売で多くのワイナリーが直面している難しさは、この商品が溢れる市場において、どのように他より際立ち、消費者の注目を集めることが出来るのか、と言うことです。
解決方法は商品のパッケージにあるかもしれません。ブランドの顔として、そして消費者にワインの品質を伝える最も重要な方法として、ワインのパッケージやプレゼンテーションに関わる様々なことが日増しに重要になってきています。
近年、多くのワインブランドが独自で斬新な発想から商品パッケージを作っており、実際に消費者の心をとらえ、売上にもつながっています。ここでは、その中から特に成功している方法をご紹介します。
チャイニーズスタイル
パッケージに中国文化を取り入れた製品に関心を示す消費者が増えたことにより、多くのワインブランドが消費者を引き付けようとこのトレンドを取り入れ始めました。
例えば、新年には、たくさんの高級ブランドが十二支をデザインした商品を中国市場に売り出します。しかし、そのような商品が溢れ、その中には伝統的な中国文化と既存のブランドのデザインを一緒にしてしまい、笑いの種になってしまったブランドもあります。
ワイン市場における中国へ向けたデザインの成功例としては、フランスのシャトー・ムートン・ロスシルドが挙げられます。実は、このワイナリーが中国の芸術家、古干(グー・ガン)と徐累(シュ・レイ)を招き、デザインに中国的な要素を盛り込んだワインラベルを作ったのは、1996年と2008年に遡ります。
しかし、この方法が実際に実を結んだのは、消費者の間で中国スタイルへの関心が高まりを見せた今年になってからでした。2020年向けには、芸術家、徐冰(シュ・ビン)を迎え、ムートン・ロスシルドの名前を伝統的な中国の文字になぞらえて表現したラベルを作りました。市場において、このデザインは好評でした。
少量サイズのボトル
世界市場では、750mlサイズのワインが最も人気が高く、多くのブランドではデフォルトになっています。しかしながら、人口は大きな都市へと流れ、都市での生活リズムは日に日に早くなってきている今、伝統的な社会構成や家族構成は大きな変化を遂げています。そして、「おひとりさま用」のライフスタイルに対する需要も大きくなってきています。
近年の調査によると、1990年代生まれの消費者の間では一人用サイズの飲み物が最も売れています。容量が小さいので、若い世代が煩わしいと思うような面倒ごと、例えば、コルクを閉めなおしたり、余ったワインの心配をしたりというようなことをせずにすみます。事実、Tmallの売上報告によると、小さいサイズ(187ml)の一ヵ月の販売数が2000本なのに対して、750mlサイズは一か月の販売数は200本程だと言います。
不正防止ラベル
偽造品のワイン
現在の市場において低水準商品または偽造品は未だに深刻な問題です。規制機関が目を光らせ、この問題に取り組んではいるのですが、短期間ではなかなか満足のいく解決方法は見つかっていません。
多くのブランドは、消費者が購入する際に本物か偽物かを判断できるように、ワインボトルに様々な不正防止ラベルを使用し始めました。この動きは消費者にも喜ばれ、ブランドに対する大きな信頼を勝ち得ています。
不正防止シリアルナンバーを採用することで、ワインの一本一本を辿って確かな品質を提供すると同時に、ワインブランドと消費者の絆を強めることができます。そして、シリアルナンバーを通して、ブランドはより正確な顧客像を知ることができるだけではなく、今後のマーケティングやプロモーションキャンペーンを行う際の効率的な手段を得ることもできます。
ロゴの採用
輸入ワインが市場において直面する問題のひとつは、中国人消費者にとって複雑なワインラベルは理解しがたいということです。外国語が分らない消費者にとっては、輸入ワインのラベルに記載されているワイナリーの名前、ヴィンテージ、生産地域、ブドウ品種などの情報はわかりにくく、ラベルを見ただけで様々な輸入ワインの違いを理解することは容易ではありません。
この点において、オーストラリアのカセラ・エステート社のイエロー・テイルは、ラベルをロゴ中心のシンプルなデザインにしたことで上手く行きました。このワイナリーのカンガルーのロゴは、色使いもスーパーのワインセクションで目立っているので、消費者は簡単に見つけることができます。この分かりやすく可愛らしいロゴのおかげで、イエロー・テイルは市場においてうまく地位を確立し、今では中国人消費者の間で「黄色いカンガルー」として親しまれています。
ストリート系デザイン
ストリート系やヒップホップ・カルチャーは、特に伝統やその継承に重きを置き、品質や敬意を重視した、伝統的なブランドに対して脅威になりつつあります。ビジネスやマーケティングにおいてストリート系やヒップホップ・カルチャーを取り入れるかどうかという議論が起きているブランドもあります。実際、ストリート系の文化は現在、一兆元規模の市場であるという否定できない事実があります。
このストリート系の市場に果敢に挑んでいるワインブランドがあります。2019年後半、中国のワインブランド、長城ワインは「The New Trends in Wine Research Institute」という名のもとに、歴史上の人物をテーマに、ヒップホップ・カルチャーのデザインを取り入れたカルチャー・ボックスセットを発売しました。さらに、長城ワインは若い消費者層から絶大な関心を集めているフレッシュでユニークなストリート系の飲み物も発売しました。それが「ハッピー・カウチ・ポテト・ドリンク」で、長城ワインがコカ・コーラとタイアップしたことにより生まれた、長城ワインの重要銘柄のワインとコカ・コーラをブレンドした商品です。
ギフトパッケージ
中国における贈り物の文化は歴史が長く、物語にも出てきます。贈り物には込められた意味や重要性、象徴するものがあり、贈り物を選ぶ際には最大限の注意が必要です。送る側と受け取る側にしか理解できない意味があり、贈り物を通して絆が結ばれ、その絆は確かなものになります。
特に、ビジネスにおいてはこのことは大切で、厳しいルールに基づき、取引相手との会食のレストランを選び、料理を注文し、飲み物を選びます。会食において招待された側はホストとの相性を探り、これにより仕事上の関係の基礎が作られます。
ワイン販売においても贈り物は重要な一端を担っており、市場では「質の良い」パッケージの商品は、特に喜ばれます。しかしながら、最近では凝ったパッケージのほとんどがワインの製造元ではなく、消費者の要求を最も理解しているワイン小売店によって作られています。
セルフヒーティングパッケージ
ほとんど全てのブランドが口をそろえて、中国人消費者は新商品を試すことにおいては世界で最も熱心で積極的だと言うのではないでしょうか。もちろん、ワイン市場も例外ではありません。
ここ2年ほど、中国全土でホットワインが流行っており、特に若い世代の間ではそのユニークな味わいと寒い時期にはうってつけの温かい飲み物ということで、とても人気があります。実際、製造業者は、その需要に合わせて、なんとか生産が追いつくようにしています。
この12月、若者に人気あるレディ・ペンギンは、セルフヒーティングパッケージに入ったホットワインを数量限定でオンライン販売しました。缶の底に圧をかけ、缶を振るだけでワインが温まりホットワインを飲むことができます。このセルフヒーティング缶のホットワインは発売と同時に注目を集め、オンラインプラットフォームにおいて大人気商品となりました。
環境の持続可能性
2019年、上海において家庭ごみの分別が始まり、上海の市民や会社はごみを捨てる際には基準に従い分別することが義務付けられました。その後、組織的なごみの回収や廃棄も行われるようになりました。今では、この基準は中国の多くの都市で採用され、ワイン市場を含む様々な産業に影響を与えました。
例えば、ペルノ・リカールはバーやワインの小売業者と協力し、空瓶の回収をし、ボトルのリサイクルを始めました。消費者もワインのボトルがリサイクル可能かどうか、さらにラベルが環境に優しい素材でできているかどうかなどを徐々に気に掛けるようになってきました。今では、このことは消費者の購入に直接的な影響を及ぼす要因になりつつあり、多くのブランドがリサイクル可能な素材や環境に優しい素材をパッケージに使うようになってきました。
ワイン市場は歴史や伝統に重きを置いており、多くのワイナリーは品質や土地の習慣、発酵技術など、細部に至るまで、慎重にワイン造りを行っています。中国は、ワインに対して非常に興味を示している熱心で新しい市場であり、消費者とワインの関係は恋愛のようで、「その見た目に一目ぼれし」「その品質に夢中になれる」ようなワインを探しています。
ワイン通にとっては、ワインに対する愛だけあれば他には何もいらないのかもしれません。しかし、広く大きな可能性を持つ消費者に強い印象を与えたいのであれば、多くの競合相手がひしめく市場において抜きんでる必要があります。ぜひ、パッケージや商品プレゼンテーションにも気を配ってみてくださいね。