中国ワイン市場はこの20年間でワインの製造においても消費においても大きな飛躍を遂げました。現在、中国ワインについて理解を深めることがますます重要になってきています。今日は、中国で最も多く栽培されているワイン用ブドウについて見ていきましょう。
データに基づく概要
2018年版 Global Grapevine Variety Distribution Reportにおいて、国際ブドウ・ワイン機構は、2000年から2015年にかけて中国におけるブドウ栽培に使用されている土地は830,000ヘクタールほどの広さになり、これはスペインの974,000ヘクタールに次いで世界第二位であると報告しています。これは、中国のブドウ栽培に使用されている土地が2000年より177％増えていることになります。
中国でブドウ栽培に使用されている最も広大な土地ではキョウトというブドウ品種が栽培されており、その敷地面積は365,000ヘクタールにも上ります。この敷地面積は、世界中でこのブドウ品種を栽培している土地の44％にあたります。ワイン用ブドウに注目すると、中国において最も広大な土地を利用して栽培されているのはカベルネ・ソーヴィニョンであり、その敷地面積は60,000ヘクタールです。これは、世界的なカベルネ・ソーヴィニョンの栽培敷地面積の7.2%にあたります。
中国で栽培されているワイン用ブドウの79%が赤ブドウの品種であり、もっとも一般的な品種は、カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、蛇龍珠、メルロー、ピノノワール、そしてマンシュウヤマブドウです。残りの20％は白ブドウの品種で、シャルドネ、イタリアン・リースリング、龍眼、ユニ・ブランなどが栽培されています。そして、ごく少量ではありますが、アリカンテ・ブーシェやYan 73などのタンテュリエ系のブドウ品種も栽培されています。
中国の主な赤ブドウの品種について知る
1. カベルネ・ソーヴィニョン
カベルネ・ソーヴィニョンは世界で最も多く栽培されているワイン用ブドウで、それは中国においても同じで、ワイン用ブドウの栽培地の75％以上で栽培されています。1892年に中国山東省の煙台に持ち込まれ、その後、カベルネ・ソーヴィニョンは数十年に渡り大量に輸入されました。
現在、このブドウ品種は河北省、寧夏回族自治区、山西省、山東省、そして雲南省などで広く栽培されています。カベルネ・ソーヴィニョンは小ぶりながらも果皮は厚く、このブドウから造られるワインは深い赤色をしており、多くは黒果実の香りがします。植物の風味を持つワインは、タンニンと酸味が強いのが特徴です。
2. メルロー
メルローは、栽培量が中国で2番目に多いブドウ品種で、山東省、河北省、山西省、寧夏回族自治区、雲南省で栽培されています。メルローからは、タンニンや酸味は比較的まろやかですがフルボディでアルコール度数の高いワインが造られます。メルローから造られるワインは赤い果実や黒果実のような味わいで、熟成すると魅惑的な香りを放つようになります。
メルローは、カベルネ・ソーヴィニョンやカベルネ・フランなどとよくとブレンドされます。カベルネ・ソーヴィニョンの「重厚な風味」とは対照的に、赤ワイン初心者におすすめです。
3. カベルネ・フラン
現在、カベルネ・フランは主に中国北部、そして西部で栽培されています。カベルネ・ソーヴィニョンと比べると、カベルネ・フランは小さく果皮も薄いので、このブドウから造られるワインはタンニンも酸味も少なくなっています。さらに、口当たりもまろやかで、香りが強いのが特徴です。
カベルネ・フランも、ワインに植物の香りを加えるためにカベルネソーヴィニヨンやメルローなどとブレンドされることがあります。ボルドースタイルのワインに使用されることが多いのですが、カベルネ・フランはアイスワインにも向いています。
4. 蛇龍珠（シャーロンジュウ）
蛇龍珠は中国特有のワイン用ブドウで、世界的にも認められた唯一の中国独自のブドウ品種として中国のワイン文化においては重要なブドウとされています。様々なブドウ品種を大量に輸入を始めた1892年、張裕ワイナリーは、蛇龍珠を含む多くの新しいブドウ品種の栽培にも成功しました。
蛇龍珠は中国北部、特に煙台や寧夏回族自治区において栽培されています。果実の大きさは中程度で、果皮は比較的厚く、ジューシーで甘いブドウです。このブドウから造られるワインはカベルネ・ソーヴィニョンと似たところがあり、マッシュルームや香水のような香りがします。
蛇龍珠は他のブドウとブレンドして用いることもできますが、ヴァラエタル・ワインにも用いることができます。このブドウ品種から造られるワインはカシスやラズベリー、ペッパー、マッシュルームのような香りがし、たいていオーク樽で熟成させます。蛇龍珠は中国では非常に人気が高く、香港では2016年5月25日を「蛇龍珠の日」としてお祝いしました。中国がブドウ品種のために祝日を設けたのは、これが初めてでした。
5. マンシュウヤマブドウ
マンシュウヤマブドウは中国独自のブドウで、主に遼寧省、吉林省、黒竜江省にまたがる長白山脈に生息しています。このブドウ品種からは、酸味とアルコール度数が低く、軽い口当たりで爽やかな味わいのワインが造られます。酸味と甘み、そしてタンニンのバランスが良く、フルーティな香りが特徴的です。
6. ローズハニー
ローズハニーは西洋とのハイブリッドのブドウ品種で、18世紀にフランスの宣教師によって雲南省に持ち込まれたのが始まりです。今日、ローズハニーは雲南省で栽培されている主な品種の一つで、ワイン造りにも食用としても楽しまれています。早熟で、雲南省弥勒市で栽培されているローズハニーは7月上旬に食べごろを迎えます。このブドウから造られるワインは、ルビーのような赤色をしており、バラやハチミツのような香りで、多くのワイン好きにはたまらない魅惑的で爽やかな香りを放ちます。
中国の主な白ブドウの品種について知る
1. シャルドネ
シャルドネの原産地はフランスのブルゴーニュ地方ですが、今では世界中の主なワイン生産地のほとんどで栽培されています。中国では、辛口の白ワインのほとんどがシャルドネから造られており、中国の膠東県や寧夏回族自治区で栽培されているシャルドネから造られるワインの品質は、海外の多くのシャルドネワインにも引けを取りません。
シャルドネは早熟なブドウ品種で、果皮は薄く、シトラスや洋ナシ、桃に似た魅惑的な果実と花の香りがします。このブドウから造られるワインは口当たりが軽く爽やかで、オーク樽で熟成されるとクリームやハチミツのような香りを放つようになります。
2. イタリアン・リースリング
中国においては「イタリアン・リースリング」という名前で呼ばれていますが、実はこのブドウ品種は他のリースリングのブドウ品種とは関係がありません。1982年に初めて中国で作られたこのイタリアン・リースリングの白ワインは、辛口もしくはやや辛口で、薄い澄んだ黄色をしており、芳醇でフルーティな香り、そしてまろやかな口当たりの酸味の強くないワインです。このブドウ品種は、爽やかなスパークリングワインにも向いています。
3. 龍眼（ドラゴン・アイ）
中国では龍眼は長い歴史を持っており、清王朝の光緒帝の時代には、この大粒で甘くジューシーな果物は王宮において貢物として使われていたと言われています。龍眼の起源はわかっていませんが、名前にまつわる多くの話が残されています。一説では、龍の目に似ていることからその名前が付けられたと言われており、中国語の名前は文字通り龍の目を表しています。
河北省のHuaizhuo盆地は龍眼の栽培で有名です。この地域で栽培される龍眼は赤紫もしくは深いバラ色をしており、果皮は薄く透き通っていて、芳醇な甘い香りがします。龍眼から造られる辛口の白ワインはゲヴュルツトラミネールと似ており、魅惑的なフルーツの香りと多くの人に好まれる滑らかな口当たりが特徴です。
4. ヴィダル・ブラン
中国東北部は、土地の広さにおいて世界で最も大きなアイスワイン製造地域の一つです。そして、アイスワインに使用されるヴィダル・ブランは主にHuanlongや桓仁満族自治県で栽培されており、この地域は「ゴールデンアイスバレー」として知られています。このブドウ品種から造られるワインは、トロピカルフルーツやハチミツのような香りを放ち、爽やかでバランスの良い味わいで、毎日の食卓のどんな食事とも相性が良いのが特徴です。
