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中国のワイン市場を読み解く

生活水準の向上とライフスタイルの変化にともない、中国でのぶどう酒(ワイン)のを求める声は徐々に増加し、今では世界第5位のワイン消費国となりました。現在、中国では、中流、上流階級以外の人達にもワインを飲む習慣が定着しつつあります。

最近の中国では、ワインを飲む若者が急増する一方で、中年から高齢の人達は健康に良いという理由でワインを嗜んでいます。お祝いの席やビジネスイベントのようなアルコールが必須のフォーマルなイベントにおいても、ワインが選ばれるようになってきました。

どうして中国でワインが好まれるのか?

2019年に、中国本土の主な10都市に住む20歳から60歳までの2400人を対象として、香港貿易発展局が実施した調査では、その多くの人が社交を目的としない、健康のためや美容効果のためといった理由でワインを購入していることがわかりました。

中国では、赤という色は文化的に重要な意味を持っており、赤ワインは、その光沢のあるルビーのような色から、特にセレモニーや来客をもてなすような場面に適しています。赤い色は、中国の歴史の中で、幸運、権力、富の象徴として考えられています。また、ロゼもそのピンク色で人気があり、特に女性に好まれています。

ここ数年、中国のワイン消費には大きな変化が見られました。以前は、特に寒さの厳しい北の地域では、習慣的にワインを飲むのは男性に限られていました。しかし、現在はお祝い行事やパーティなどの席では、女性もワイングラスに1、2杯ほどワインを嗜むようになりました。大都市のライフスタイルが大きく西洋化してきたことで、伝統的な白酒(ホワイトスピリット)は、だんだんと飲む機会が減ってきてしまいました。

「赤」という特別な色

中国の人たちにワインが好まれる理由は、単純にその味わいや健康効果だけではありません(ブドウから造られるワインは、穀物から造られるお酒よりも健康に良いと考えられています)。中国では、ワインの赤い色が富や幸運に繋がるものとして、社会的、文化的理由からもワインが好まれています。

中国におけるワインの歴史

1990年代に中国のDPG成長率がプラスに転じ、世帯資産も増加したことを受け、ワインの消費が急速に伸びました。1996年、李鵬首相は、スパイシーで辛口の白酒に比べ健康に良いという話をし、総会において赤ワインで乾杯をしました。これ以降、ワインの人気に火が付き、特に高所得者、高学歴の人々の間で消費量が伸びました。これを受けて、大都市では、様々な種類のワインを販売する店が続々と登場しました。

21世紀に入り、古くからの主な世界市場におけるワインの消費量に変化は見られませんが、中国における消費量は飛躍的に伸びています。これにより、世界中のワイン製造業者はこの消費量になんとか追いつこうとしてきました。あるフランスの新聞では、近年の中国におけるワインの消費量の増加は、「目を見張るものがある」と述べています。

現在の中国のワイン市場

中国のワイン市場を読み解く

現在、ワインを嗜むのは国民の3%程だと言われていますが、中国はすでに世界第5位のワイン市場に成長しました。2018年のワインの世界全体の生産量は292億リットルで、243億リットルほど売り上げました。売り上げ率の高かった国の中で、中国は17.9億リットルで世界第5位になり、急速に成長しているワイン市場の一つになりました。

もし中国で一人当たりのワイン消費量が3リットルになれば、世界一のワイン市場になるだろう

国際ブドウ・ワイン機構の統計結果を見ると、2016年の中国における年間の一人当たりのワイン消費量は1.24リットルで、これは世界的な平均3.35リットル半分を下回るものでした。もし、中国で一人当たりのワイン消費量が3リットルになれば、世界一のワイン市場になるでしょう。

急増する中国のワイン輸入量

2018年、中国のワイン輸入量が7億9680万リットルにまで増えました。2017年と比べると、少し減少してはいますが、それでも2013年と比べると80%程増加しています。中国が輸入しているワインの20%程はバルクワインで、残りはボトルワインです。2018年の中国のワインの輸入額は39億1000万USドルで、2017年とくらべると6.5%程増加しています。

中国のワインの輸入における価値

中国のワインの輸入における量

中国が世界貿易機構に参加してから4年後の2005年、中国でワインが定着し始めました。当初は、主にボルドー・ワインを輸入しており、その他にも少量、フランスからブルゴーニュ・ワイン、ローヌ・ワイン、シャンパン、そしてイタリアの有名なワインも輸入していました。

2008年2月に香港政府がワインの関税を撤廃すると、その年のワイン輸入量は一気に80%以上も増加しました。このワインのほとんどが、中国本土に運ばれました。

香港貿易発展局の発表した統計によると、2018年の香港のワイン輸出量は4億3900万USドルで、そのうちの84.4%が中国本土へ輸出されました。昨年のワイン輸出120億HKドル(15億USドル)ほどで、香港に輸入されたワインの1/3程のほどが中国本土で販売されたということになります。

中国はどこからワインを輸入しているのか?

中国のワインの最大の輸入元はフランスで、2018年にフランスから輸入されたワインは約10億USドルでしたが、前年度よりも9%程減少しています。2018年の2番目の輸入元はオーストラリアで、約7億USドルで、こちらも前年度から3.5%減少しました。チリは、3番目の輸入元で、総輸入額は3億4000万USドルで、前年度と比べて4.5%減少しています。

中国市場におけるワインの輸入元トップ3

近年、輸入ワインはさらなる関税撤廃で追い風を受けています。2012年、ニュージーランドの中国へのワイン輸出の関税が撤廃され、2015年にはチリ、2018年にはジョージア、そして2019年にはオーストラリアからのワイン輸入も関税が撤廃されました。

中国関税資料によると、2011年から2017年にかけて、中国のワインの輸入量、輸入額共に毎年約12%ずつ増加しました。そして、報告によると、モルドバも5番目の関税撤廃の国になる予定のようです。

多くの国と比較すると、中国ではワインの製造に膨大な費用がかかり、ワインの生産量を増やすこと、質を向上させること、どちらにおいても難しさがあります。その結果、中国のワイン市場では輸入への要望がとどまることなくあります。ワイン市場の低価格市場ではより安価なワインを求める声がある一方で、高価格市場ではプライベートブランドなどを求める声もあります。両方の価格帯からの要求があり、中国の輸入市場は最大限の利益を上げています。

2018年は外部要因により輸入が後退

2018年は、景気後退と米中貿易戦争の影響を受けて、ワインの輸入量、消費量ともに減少しました。中国関税資料によると、2018年のワイン輸入量が前年度と比較して減少傾向を見せたのは、2014年以来初めてで、6億7500万リットルで、8.95%の減少でした。

香港でのワインの輸入もそれにともなって減少しました。香港貿易発展局は、昨年のワインの総輸出量が22.5%減少し、2019年上半期では、総額にして64%もの減少となりました。

しかしながら、ワイン輸入市場の総額は依然として上昇傾向にあり、2018年は28億2000万USドルに達し、1.1%増えました。つまり、輸入量は減少しているけれど、輸入額は増加傾向にあるということになります。中国でのワインの需要が伸び続ける限り、輸入市場は確実にこのまま成長すると思われます。

中国のワインを飲む習慣に見られる変化

中国のワイン市場を読み解く

個人でのワイン消費が行われるようになり、中国におけるワインの消費傾向がビジネスシーンから家庭へと移り変わり、人々の日常の一部になりつつあります。

2017年に中国本土のワイン消費者を対象に香港貿易発展局が行った調査の結果で、驚くべきことに回答者の大部分が家でワインを消費していると答えました。実際、74%の回答者が家で一人でワインを飲むと答え、次に多かったのが、友人と一緒に飲むが66%、一人もしくは家族と外食の場でワインを飲むが58%、フォーマルなお祝い事の席が54%、ビジネスシーンが52%という結果でした。

回答者がワインを飲むシチュエーション

家で77%
友人との親睦会66%
外食(一人もしくは家族と)58%
晩餐会54%
ビジネスイベント52%

また、77%が健康のためにワインを飲むと回答し、53%はワインの味が好きだからと答えました。どちらにしても、中国のワイン消費者は増えており、贈り物やコレクションとしてワインを購入するというよりも、自分たちで楽しむためにワインを購入しているようです。このように、ワインは中国の日常生活の一部になってきています。

回答者が赤ワインを飲む主な理由

理由回答者の比率
健康77%
53%
社会的要請51%
生活の品質を反映したもの48%
美容に良い性質45%
とても流行っています。26%

さらに、調査によると、回答者の47%が101-200元(14.50-28.50 USドル)ほどのワインを購入すると答え、ボトルあたりの平均価格は193.6元(27.50 USドル)で、全体として中間から安価なワインを購入する傾向にあるようです。中国の世帯収入が増加しており、それにともないワインの平均購入価格も増加していることがわかります。

さらに興味深いことは、中国では必ずしも大きなボトルワインの売れ行きがいいというわけではないということが、この調査からわかりました。73%の回答者が小さめボトルワイン(375ml)を好むとし、特に女性の回答者の8割がこのように答えました。ここ数年、就寝前にワインを飲むのは美容に効果的であるとソーシャルメディアで広まり、これによりさらに小さいボトルワインの人気が高まりました。

中国でワインのオンラインマーケット市場始まる

中国本土では、未だにスーパーや専門店などの実店舗が主なワインの購入場所となっていますが、オンラインストアでの販売もワインの総売り上げの22.1%を占めるようになり、これからの見逃せない市場なってきています。あるオンラインストアでは、今年のワインの売り上げはすでに2倍以上に伸びていて、200元(28.50 USドル)以下のワインが売り上げの70%、200-499元(28.50-71.00 USドル)のワインの売り上げは15%を占めています。

大きな可能性を秘めた中国ワイン市場

ここ2年程、中国で売られているワインの価格は上昇し、200-499元(28.50-71.00 USドル)ほどの価格帯のワインが特に力を入れて宣伝されています。人生を謳歌したいと思っている中国の若者は、そのために少し余分にお金がかかることに戸惑いはありません。したがって、この世代の人たちが、この先、より高価なワインを楽しむ可能性もあるのです。

シートリップが昨年行ったフードフォレストの調査によると、25-35歳の50%以上が友人や家族などと楽しむディナーではまずワインを選ぶと回答し、30-35歳に年齢層を絞ってみると、その割合は70%に上がりました。このことから、中国はすでに巨大なワイン市場となりましたが、さらなる成長の可能性も大いに秘めていると言えます。

Sources:
https://www.qianzhan.com/analyst/detail/220/190326-56f2f18f.html
https://www.sohu.com/a/82785778_255580
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1616310060515390102&wfr=spider&for=pc
https://www.wine-world.com/culture/sc/20141230152537627
https://www.wineinstitute.org/resources/pressroom/04052018
https://www.decanterchina.com/en/news/2017-china-wine-imports-australia-and-georgia-taking-a-leap
https://www.globenewswire.com/news-release/2019/04/01/1790978/0/en/China-Wine-Import-Report-2013-2018-2019-2023.html

ビッキー

ヴィッキーさんは、中国山東省にある小さな沿岸の都市、煙台で生まれ育ちました。煙台は、中国では有名なワインの生産地です。ヴィッキーさんは、修士課程在学中に世界のワイン産業における市場戦略について研究をしているうちに、大のワイン好きになりました。旅行と美味しいものを食べるのが大好きで、夢は各地の最高のワインを味わいながら世界中を旅行することだそうです。

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