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「中国人好みの味わい」という誤った考え方:中国市場において好かれるワインの本当の理由

どのようなワインが中国人の口に合うのか、という質問をされることがよくあります。私は何年にも渡って様々なワインを試し、そして多くの赤ワインのコンテストやブラインド・テイスティングにも参加してきました。

このようなイベントでは、スポンサーによって専門家を含む多くの人が招待され、半日もしくは一日がかりで何百種類ものワインを飲み、率直な評価を行います。そして、色、アロマ、ボディ、後味、特徴、収穫年などの各カテゴリーに与えられた評価ポイントに基づいてワインの順位付けを行い、リストにします。では、このポイントによる評価を行うことで、中国人の口に最も合うワインを見つけることができるのでしょうか?リストの最下位に位置するワインは悪いワインなのでしょうか?

実際、どのワインを美味しいと感じるかは人によって違います。今日のワイン造りを取り巻く厳しい環境においては、(ごく一部の偽物を除いて)多かれ少なかれワインの品質は保証されています。つまり、ワインを評価する際に「良いワイン」「悪いワイン」という区別は必要あないのです。むしろ、個人の好みに合うかどうかが問題になってきます。自分が美味しいと感じるワインが、一番いいのです。

どんなワインが一般的に「中国人の口に合う」と言われているのか?

「中国人好みの味わい」という誤った考え方:中国市場において好かれるワインの本当の理由

中国市場に進出するために、多くのワイナリーでは、甘くフルーティで比較的ボディがあり、酸味とタンニンの量が少ないワインが造られています。このようなワインは飲みやすく、中国人の口に合うとされており、近年の中国市場において大量に販売されています。

このようなことを聞くと、中国人の味覚に合うワインを見つけることはそんなに難しいことではないように思えますが、実際は、より複雑で難しい問題なのです。今日の中国では、ワインの評価に関して以前よりも多様な意見があります。たいてい専門家は複雑な味わいのワインを好みますが、一般の消費者にとっては「飲みやすさ」が重要になってきます。

ライフスタイルや生活事情、健康状態と同じように、味や香り、ワインのテクスチャーの好みは人によって違います。ワインの色やアロマ、後味の酸味、渋み、そして甘みの好みも人によって大きく変わってきます。

結論から言えば、人によって味わいの好みが異なるので、14憶人以上の人口を誇る中国において中国人全体の好みを包括するような一つの基準を設けることは非常に困難なことだと言えます。しかしながら、中国市場においてビジネスを成功させるために、「中国人向け」をブランド戦略としているワイン製造者も存在します。

中国人ワイン消費者の好みを調査する

「中国人好みの味わい」という誤った考え方:中国市場において好かれるワインの本当の理由

中国市場で成功するための秘訣を熱心に探究する中で、「中国人好みの味」というのは、かつては世界中のワイン販売業者にとっては、どうしても知りたいことの一つでした。多くの研究が行われ、数十年前に、ついにワイン販売業者の間で一つの意見に辿り着きました。中国人の間で味の好みは大きく異なるけれど、テイスティングを通してある一定の傾向が明らかになったのです。その傾向というのは、シンプルでフルーティな香りで、酸味は少なく甘いワインが好まれるというものでした。中国において白ワインよりも断然赤ワインがよく売れるのは、この好みの傾向をよく映し出していると言えます。

2015年、中国のワイン教育機関Ease Scent Wine Educationは、中国ワイン市場に向けて“Wine Taste Preferences of the Chinese Consumer Survey”というワインの好みに関する調査を行い、the Chinese Taste Preferences白書を刊行しました。中国人ワイン消費者の好みを調査するために、主に、アロマ、酸味/甘み、タンニンの量、ボディという4つの基準を基にアンケートが作られました。この調査の目的は、「最も中国人の好みに合う」ワインの特性を調べることでした。この調査における結果の概要は以下の通りです。

1.中国人消費者はフルーティな香りのワインを好む傾向にある

回答者の90%近くの人が、香りを区別しやすいだけではなく気分が華やぐので、フルーティな香りのワインが一番好きだと回答しました。さらに、49.3%の回答者は“フルーティな香りが芳醇な”ワインが好きだと回答しました。中国の22の都市で行われたブラインド・テイスティングイベントでは、73%の参加者が“フルーティな香りが芳醇な”ワインが好きだと回答し、その理由は“フルーツの香りが弱い”ワインよりも幸せな気分になれるからだと説明しました。

2.中国では酸味は低レベルから中レベル程度のものが好まれる

アンケートの結果では、回答者の11%が酸味の強いワインを好むと回答しており、ブラインド・テイスティングにおける参加者のうち13%が酸味の強いワインを好む、と回答したことと一致しています。つまり、中国のワイン消費者のうち90%近くが酸味が低レベルから中レベルのワインを好むということになります。アンケートでは、40%が中レベルの酸味のワインを好むと回答し、49%が低レベルの酸味のワインを好むと回答しました。そして、ブラインド・テイスティングイベントでは、63%の参加者が中レベルの酸味のワインが好みだと回答しています。このことから、中国のワイン消費者は酸味があまり強くないワインを好む傾向にあるということが伺えます。

3.タンニンの量は低い方が中国人ワイン消費者には受け入れられやすい

アンケート回答者の中で、“力強く余韻のある苦い”ワインが好きだと回答したのはたった14%でした。これはブラインド・テイスティングイベントにおいても同様の傾向がみられ、タンニンの量が多いワインが好きだと回答した参加者はたったの12%でした。このアンケートが行われた時点では、中国人消費者はタンニンの量に比例する力強く刺激的な風味を伴わないワインを好む傾向にあったと言うことがわかります。実際、多くの人が苦みのあるワインを試飲すると、明らかに顔をしかめて不快感をあらわにしました。

4.中国人消費者はフルボディのワインを好む傾向にある

調査において、年齢やワインを飲む頻度に関係なく、回答者の多くが中レベルからフルボディのワインを好むことがわかりました。44.7%が中レベルのボディのワインを好み、33.5%がフルボディのワインを好むと回答しています。ブラインド・テイスティングイベントにおいては、64%の参加者がフルボディワインを好むと回答しました。

これは「中国人の口に合う」ワインの間違いのない基準なのでしょうか?

調査が行われた時点では、中国のワイン消費者は“酸味の強くなく、苦みの少ない、少し甘めの”ワインを好む傾向があったことがわかります。しかし、調査が行われてから数年経ち、現在の中国のワイン消費者は、甘くフルーティな香りのワインだけではなく、より幅広い味わいのワインを好むようになりました。

有名なワイン批評家のマーティン・ハオ氏は、「中国人消費者の多くが、質の高いワインが持つ複雑な味わいを楽しむようになりました。そして、濃厚な味わいの様々な素晴らしいワイン受け入れるようになってきました」と述べています。更に、多くの消費者はチリワインやアルゼンチンワイン、そしてオーストラリアワインの値段に対する品質の良さを認識し始めています。また、ワインの評価においては、単にフルーティな香りや甘さだけではなく、ボディのバランスなど国際的に使用されている基準を使うことにも慣れてきました。

今でも「中国人好み」という考え方を支持する人はいますが、近年少しずつこの意味が変化してきています。多くのワイン愛好家の間では、ワインの味の好みは多様で人によって違うと考えられるようになりました。やはり、今でもフルーティな香りの甘口のワインを好む人は多いのですが、この傾向が全ての中国人消費者にあてはまるとは考えられていません。味の好みが多様化してきた一因としては、中国人ワイン消費者が様々な種類のワインを飲むようになったということが挙げられます。

では、「中国人好みの味」は結局存在するのでしょうか?

中国人ワイン消費者は様々な味わいのワインを経験し、もっと多くのスタイルやブランドを試してみたいと思っています。そして、新しいスタイルやブランドに挑戦すると、たいていの場合、新たな味わいに出会います。伝統的に使用されてきた世界的な基準を除けば、自分の好みの味わいやスタイルにぴったりのワインを見つけることが大切です。

現在、世界中の数えきれないほどの素晴らしいワインを容易に手に入れることができるので、恐らく赤ワイン好きの人は、多種多様な味わいのワインを試してきたことでしょう。このような経験を通してこそ、ワインを評価する能力が養われ、ワインを飲む楽しさや魅力をさらに知ることができるのです。

ワインを評価する際に、ワインの味わいだけを考慮するのではなく、料理とのペアリングを考えた方が良い

「中国人好みの味わい」という誤った考え方:中国市場において好かれるワインの本当の理由

味の好みは国境ではなく個々人よって異なることがわかりましたが、何年にも渡って行われた「中国人好みの味わい」に関する調査は無駄だったのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。

今日、世界的にみると、ディナーの席でワインを楽しむ人が多いようです。つまり、「中国人好みの味わい」にこだわるよりも、どんなワインが中華料理と相性が良いのかを考える方が良さそうです。

実際、中国市場に興味があり、世界的なワイン市場において活躍している人たちの多くはこのことを理解しています。さらに、アジア市場に特化しているワインの専門家の中には、積極的にこの問いに対する調査を行っている人達もいます。中華料理とワインのペアリングは、多くの西洋料理とワインのペアリングとは異なります。フランス人は一つのメニューに対してある特定のワインをペアリングさせたりしますが、中国人は様々な料理や風味によく合う一本のワインを探す傾向にあります。

結果として、中華料理と相性の良いワインとしてまず挙げられるのがスパークリングワインです。スパークリングワインはどんな中華料理とも相性が良く、甘めの上海料理や辛い四川料理の火鍋、そして広東料理ともぴったりです。どんな中華料理とも相性が良いというのが、スパークリングワインが中国でよく売れる主な理由です。

「初心者向けの味わい」を理解しよう

比較的最近ワインを飲み始めた人や、特に初めてワインに挑戦する人にとっては、タンニンの量が多いワインや酸味の強いワインはあまり口当たりがよくないと感じるかもしれません。このようなワインを美味しく飲むためには、特定の地域で造られたワインを選んだり、ワインをサーブする時の温度に気を使ったり、相性の良い料理と一緒にワインを飲むといいかもしれません。

酸味の強いワインや苦みのあるワインはあまり好まず、甘口のワインを好むような人は、「中国人の好み」ではなく、「初心者向きの味わい」を好むと考えた方が良いでしょう。そして、多種多様なワインを試していくうちに、自分の好みに合うワインを見つけることができるはずです。もしかしたら、本当は酸味や苦みのあるワインを好きになるかもしれません。

現在の中国人ワイン愛好家の味の好みは多種多様

中国人ワイン愛好家が好むのは、シャンパンかもしれませんし、リースリングかもしれません。もしかしたら、カベルネ・ソーヴィニョンやソーヴィニョン・ブランなど世界中で造られている他の様々な種類のワインかもしれません。つまり、中国人のワインの好みは多種多様で、一括りにすることはできないのです。

ビッキー

ヴィッキーさんは、中国山東省にある小さな沿岸の都市、煙台で生まれ育ちました。煙台は、中国では有名なワインの生産地です。ヴィッキーさんは、修士課程在学中に世界のワイン産業における市場戦略について研究をしているうちに、大のワイン好きになりました。旅行と美味しいものを食べるのが大好きで、夢は各地の最高のワインを味わいながら世界中を旅行することだそうです。

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