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コロナウィルス感染症が2020年のワイン醸造にどのような影響を与えるのか:国別の報告

現在世界を席巻している新型コロナウィルスがワイン市場に多大な悪影響を及ぼしていることは言うまでもありません。バーやレストランは休業し、多くの消費者は金銭面の不安を抱え、そしてワイン生産者の期待収益は50%を下回っています。渡航制限や国境の封鎖から輸送活動はとても複雑になっています。隔離生活、ロックダウン、その他多くの措置が取られ、現在、通常通りにワインの生産を行うことは不可能になっています。

多くの人が現在の状況を心配する一方で、これが2020年醸造のワイン生産に与える影響も考えなくてはいけません。今は南半球のワイン生産者にとっては収穫の真っただ中であり、北半球では春がやってきて、すぐにでもブドウ園で仕事を始めなくてはいけません。今行わなくてはならない仕事は収穫やワインの生産と直結しており、ひいては2020年の欧米のワインの品質にも影響を与えます。

世界で最も大きないくつかのワイン生産地とコロナウィルス感染症が2020年醸造のワインに与える影響見ていきましょう。

イタリア

イタリアは、現在、コロナウィルス感染症による死者の数が世界で最も深刻で、すでに1ヵ月程ロックダウンの状態にあります。しかし、ブドウは実り、ブドウ園ではこれから重要な作業に取り組まなくてはいけません。

今までのところ、ワイン生産者は規模を縮小して作業を行っていると言っています。ワイナリーやブドウ園での仕事は重要なものであるとされ、継続が許可されています。しかしながら、十分な予防措置を取り、出来るだけ接触を避けるように心がけなくてはいけません。

感染者数は依然として増え続けており、万が一熟練したスタッフが感染し働けなくなった場合には、ワイナリーにとっては大きな問題になる可能性があります。さらに、渡航制限や国境封鎖が行われており、この収穫時期には通常であれば期待できる他国からの労働者やワイン生産者の支援を受けることができない状態にあります。

https://www.facebook.com/TenutaTalamonti/videos/235455937843427/
Rodrigo Redmont, owner of Talamonti winery.

フランス

フランスの状態はイタリアとあまり大差はありませんが、イタリアほどウイルス拡大はしていないようです。主要なワイン生産地では、規模を縮小し予防措置を講じながら、作業が行われているようです。

これからの季節、ブドウの栽培に一層の注意を払わなくてはならないので、フランスのワイン生産者は感染にかかり働けなくなることがないようにしなくてはなりません。これからますます忙しい季節になるので、作業は行われていますが、スタッフの感染リスクを避けるためになるべく離れて作業を行っています。アルザスが位置するフランス東部では、現在感染者数が増えており、この先の作業に大きな影響を与える可能性があります。

ニュージーランド

コロナウィルス感染症が2020年のワイン醸造にどのような影響を与えるのか:国別の報告
Day 1 of Covid 19 lockdown in Martinborough, New Zealand

南半球は、今まさに収穫時期真っただ中です。現在、ニュージーランドは国境封鎖をしており、ニュージーランド国民や永住者以外は入国ができません。したがって、ニュージーランドの多くのワイナリー、特に規模の大きなワイナリーでは、収穫時期には通常期待できる海外労働者の支援を受けることができなくなっています。このような労働力の欠如から、2020年醸造のワインは量、そしておそらく質ともに影響を受ける可能性があります。

さらに悪いことに、ワイン生産業は必要不可欠なビジネスだとは考えられていないため、この一番大切な時期にも様々な制限の下で作業を行わなくてはいけません。ニュージーランドのワイン生産者にとって、2020年の製造は、重要な時期における資源と労働力の欠落から非常に難しい年となるでしょう。

アルゼンチン

今のところ、南アメリカ大陸はコロナウィルス感染症の本格的な影響を受けていませんが、感染件数は増加しています。この地域は、医療に関しては常に悪戦苦闘しており、感染爆発が起きれば、非常に難しい事態になると思われます。

ワイナリーは収穫時期の真っ最中で、感染爆発が起こる前に全ての収穫を終えようとしています。収穫が終わらずに感染件数が大幅に増えることがあれば、ワイナリーにとっては惨事となるでしょう。収穫時期、ワイナリーでは増員して昼夜問わず働き続けます。もし誰かが感染したたり家族の面倒を見るために働けなくなったとしたら、収穫を行い、ワインをタンクやバレルに無事に詰め終わることは困難になります。

カリフォルニア

2020年の醸造に関して言えば、カリフォルニアのワイン市場は、あまり大きな問題はなくコロナウィルス感染症のパンデミックから抜け出られそうです。ワイナリーのテイスティングルームは閉鎖されていますが、ワイナリーや農園での仕事は必要不可欠なビジネスであると認められており、作業は継続しています。

カリフォルニア州のコロナウィルス感染件数は依然として増加傾向にありますが、主なワイン生産地域には今のところ大きな影響は出ていません。カリフォルニア州は早い時期に「他者との距離をとる(ソーシャルディスタンス)」などの厳密な措置をとったことと、都市部であっても全米で一番の死者数を出しているニューヨーク州よりも人口密度が高くないことが功を奏したと言えます。あと10日程でアメリカはコロナウィルス感染症パンデミックのピークを迎えると言われており、カリフォルニアの2020年醸造ワインはあまり深刻な影響を受けずに済みそうです。

2020年醸造のワインは悲喜こもごも

コロナウィルス感染症が2020年のワイン醸造にどのような影響を与えるのか:国別の報告

全体的に見て、コロナウィルス感染症のパンデミックが与える2020年醸造のワインへの影響は地域によって異なるようです。どんな事でもそうですが、感染が始まった時期や政府の措置などが、どの程度の被害になるのか、どれほど多くの人がウイルスに感染するのか、または働けなくなるのかということに影響を与えます。

南半球は、現在、ワイン醸造の最も重要な時期のひとつである収穫時期の最中であるにも関わらず、厳しい制限が敷かれていることから、今年のワイン醸造に大きな影響が出ると予想されます。

北半球では、アメリカよりも欧州の国々で早くコロナウィルスの感染が始まり、非常に厳しい状況に直面しています。さらに、今後どのくらい長く規制が行われるか先の見通しがありません。一方で、アメリカ、特にカリフォルニア州は人口密度が低く、早い段階で感染防止措置が行われたこともあり、比較的被害が少ない状態でパンデミックを終えられそうです。

売上減少や観光客激減により財政的には厳しくなると思われますが、2020年醸造のワインとその品質に大きな影響がないことを祈っています。ワイナリーが行っているオンラインテイスティングに参加して、みなさんのお気に入りのワイナリーをぜひ支援してください。

シーダー

シーダー・ストルテナウはシカゴを拠点とするワインライター、又、コンサルタントであり、テクノロジー業界で短期間働いた後、彼女は、あらゆる食に対しての関心が高かったのでワインに拠点が戻りました。彼女が特に注目しているのは、消費者がワインを買いやすくなることと、あまり知られていない品種に関心を持てるようになることです。シーダーは現在、ワインの小売業で仕事をしているほか、ワインに関する記事を書いたり、小規模生産者のブランド開発に関するコンサルティングを行ったりしています。

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