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日本のワイン市場の内部を垣間見る

日本のワイン市場の内部を垣間見る

1960年以来、日本のワイン市場は驚くほどの成長を遂げてきました。この人口1億2000万人のアジアで最も成熟したワイン市場は、投資しようとする会社が様々な恩恵を受けられる場所です。日本には、小規模ではあるものの、非常に活気のある国内産ブドウを使用したワイン市場もあり、そのワイン造りの歴史は長く、明治初期にまで遡ります。

ワイン・インテリジェンス(Wine Intelligence)の統計によると、日本には習慣的にワインを飲むという人が3000万人ほどいるそうです。このうちの半数が55歳以上だと言われています。年配の人ほどフランスやイタリア産のワインを購入する傾向にあり、ニューワールドワインよりは、伝統的なオールドワールドワインを好んでいます。一方、若い世代はこのようなこだわりはなく、新しいものに挑戦したり、様々な国のワインを試したりしています。上の年代と比べ、若い世代は飲む量はあまり多くないようです。

日本における

Source: Wine Intelligence, Japan Landscapes March 2019 Report

日本でのワインの消費量は徐々に増加傾向

酒、焼酎、ビールよりも健康的な飲み物として、ワインは若い世代の間で流行っています。つい最近までは、日本のワインの主な消費者はエリート層でしたが、一般的にワインが好まれるようになってきてこの現状が大きく変わりました。ワインの消費はまだ比較的少ないのですが、徐々に増えてきており、酒やビールといったより定着度の高いアルコール飲料に匹敵するほどになってきました。ワイン市場にも変化が見られるようになり、日本のワイン愛好家の好みと合うようになってきました。

今日、日本はアジアにおけるワインの消費量ナンバーワンです(年間一人当たり2.6リットル)。10年前の2009年には、一人当たりのワインの年間消費量は1.9リットルでしたので、消費量は徐々に増えてきています。

リットル単位での一人当たりの平均消費量

Source: Statista, August 2019

ワインが好まれるように

日本で最も好まれているワインは赤ワインで、次に白ワインが好まれています。日本のワイン市場は非常にテンポが速く、トレンドやメディアによる影響を非常に大きく受けます。赤ワインが健康に良いと科学的に証明されたと報じられた際は、この年の日本の年間の赤ワインの消費量は前年度の3倍近い、一人当たり3リットルに増えました。

『神の雫』という漫画も、他ではあまり見かけませんが、ワインの消費量を伸ばすきっかけになりました。これは、現代のワイン愛好家の教科書として考えられ、ワインジャーナリストの間でも話題になりました。この漫画は、1週間の読者数が50万人にも上り、ある特定のワインが漫画に登場すると、そのワインの売り上げはうなぎ上りに伸びました。

日本のワイン市場の内部を垣間見る

近年は、特に女性の間でスパークリングワインが人気で、昨年輸入されたフランス産のワインの半分が高価なスパークリングワインでした。2018年にはスパークリングワインの輸入は、5億4250万ドルから6億1560万ドルと13%増加しました。

35歳以下の消費者は、スクリュー式の蓋に抵抗がないようですが、世代が上の消費者はコルクの蓋のワインほど品質が高いと信じているようです。

海外ワインの根強い人気

日本のワイン市場では、未だに海外のワインが好まれる傾向にあります。日本産のワインも徐々に人気が出てきてはいますが、ワイン市場全体の4.8%程に留まっています。

年配の消費者はフランス産やイタリア産のヴィンテージなどの伝統的なヨーロッパワインを好む傾向にあり、若い世代はチリワインなどのニューワールドワインなどを楽しんでいるようです。

2019年2月に施行された欧州連合と日本の間で結ばれた自由貿易協定により、ヨーロッパからのワインの輸入量が著しく増加しました。この協定により、ワインの関税はなくなり、ヨーロッパと日本のワイン業者と消費者は世界最大の開かれた貿易地帯の恩恵を受けることになりました。EUにおいて、日本への最大のワイン輸出国であるフランスは、EU圏内における日本へのワインの輸出の60%を占めており、イタリアが17%、スペインは30%ほどです。

2019年は、フランス、イタリア、スペインなどのヨーロッパ各国のワインの輸出が著しく増加し、特に2月から6月までの黄金期は、総額にして23%、輸出量にして25%も増えました。

日本におけるチリ、フランス、イタリア、スペインからのワインの輸入

Source: UN Comtrade Database

ヨーロッパ圏から日本へのワインの輸出は、過去5年間で最高を記録し、総額にして9%、輸出量にして10%増加しました。

欧州から日本への輸出価値と量の成長率

Source: Eurostat

既に日本のワイン市場において手ごわいライバルとなっていたチリ産のワインは、2007年から関税がなくなり、これにより著しく売り上げが伸びました。チリ産のワインの価格はヨーロッパ産のワインと同じくらいで、日本のワイン市場においてその地位は急速に高まってきました。しかし、専門家は、現在、消費者の関心がヨーロッパ産ワインへ向いているので、チリ産のワインの市場における成長は減速するだろう予想しています。実際、今年度のチリ産のワインの消費量は30%減少しています。

輸入ワインの平均価格

2018年のボトルワインの輸入量は、1億6700万リットルで、その総額は9億7820万ドルほどでした。輸入ワインの1リットル当たりの価格は、5.85ドルでした。アメリカ産のボトルワインの平均価格は、1リットル当たり15.07ドルから16.14ドル、フランス産ワインは9.74ドルでした。チリ産のボトルワインの平均価格は一リットル当たり2.87ドル、スペイン産ワインは3.05ドル、イタリア産ワインは5.05ドル、オーストラリア産ワインは4.17ドルでした。

日本のボトルワインの輸入 (百万USドルで)

相手国20142015201620172018
世界$1,059.9$949.1$921.7$978.6$978.2
フランス$480.2$410.3$393.6$413.2$411.5
イタリア$176.6$149.4$144.0$153.5$153.1
チリ$136.6$153.2$145.5$159.0$147.3
アメリカからの輸入$92.0$90.6$95.5$103.6$115.8
その他$174.5$145.7$143.1$149.3$150.6

Source: Global Trade Atlas

収益と今後の見通し

スタティスティカ(Statista)によると、2019年のワイン市場における総収入は97億3900万ドルで、2020年には、総収益が1.2%ほど増える予想です。

日本におけるワイン市場の総収入

Source: Statista, August 2019

ワインの流通

1960年以来、日本のワイン市場は驚くほどの成長を遂げてきました。日本のワイン市場は非常に成熟していますが、この市場は現在、オフトレードによって成長を続けています。金銭的な理由から、消費者はオントレードからは離れつつありますが、ヨーロッパの伝統的な飲み方である夕食の席やレストランでのワインの消費も行われています。

日本で消費されているワインの2/3程がオフトレードで販売されていますが、レストランでのワインの消費量も伸びています。日本には、世界一多くのソムリエがいて、日本ソムリエ協会には7000名ほどが所属しており、ワインの消費やトレンドにおいて重要な役割を担っています。日本のレストランなどでは、シェフが食事を決める「おまかせ」があり、ワインについてもこの「おまかせ」があります。レストランにいるソムリエは、お客様に直接ワインを薦めるという重要な役割を果たしています。

2023年までには、68%のワインが、バーやレストランで消費されると予想されています。

家庭外で消費されるワインによる収益

Source: Statista, August 2019

日本のワイン市場を観察してみて

世界で第7位のワイン輸入国である日本のワイン市場は、安定し非常に成熟しており、3000万人もの消費者がいると言われています。

日本のワイン消費者は、好奇心が強く、新しいことを知ること、挑戦することに意欲的です。日本には、イタリアに続いて世界一多くのソムリエがいるということは、このワイン市場の成長がまだまだ見込めるというサインだということでしょう。

近年、日本において、ワインは従来通りの場面での消費から教養や友人と過ごすため、そして興味から消費されるようにもなりました。

35歳以上の日本人の多くはビジネスや付き合いなどの場面において、レストランでワインを嗜むことが多いようです。

一方、若い世代は、バーやクラブ、パーティなどでワインを飲む機会が多いようです。

Sources:
https://www.wineintelligence.com/downloads/japan-landscapes-2019/
https://www.statista.com/outlook/10030000/121/wine/japan#market-ontradeRevenueShare%202019
https://apps.fas.usda.gov/newgainapi/api/report/downloadreportbyfilename?filename=Japan%20Wine%20Market%20Overview_Tokyo%20ATO_Japan_2-5-2019.pdf

ジェシカ

ジェシカさんは、トスカーナを拠点に活躍しているワインのスペシャリストです。世界的に高い評価を受けているイタリアのワインジャーナリストのアシスタントとして活動し、その後ワインのテイスティングイベントを開催したり、英語への翻訳を行ったりしているうちに、ジェシカさんはワインの卸売りの世界へと足を踏み入れました。そして今、このような経験から得た国際ワイン市場に対する広い視点や、新しい知見を読者の皆さんに伝えています。

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