インドネシアでどのようにワイン市場に乗り出すか:実用ガイド

インドネシアでどのようにワイン市場に乗り出すか:実用ガイド

インドネシアのワイン市場はアジア最大規模だと耳にしたことがありませんか。ワイン販売業者ならば、インドネシアで自社の製品を売り出すための可能性について知りたいと思いますよね。でも、ちょっと待ってください。インドネシアはイスラム教国家のはずです。一つお伝えしたいのは、伝え聞いた情報がいつも正しいとは限らないということです。ここでは、事実に基づいたインドネシアの状況について一通りお伝えし、更に、実用的なアドバイスもお伝えいたします。

インドネシアに関して

インドネシアでどのようにワイン市場に乗り出すか:実用ガイド
Credit: Alex Block

1. インドネシアは宗教国家ではない

インドネシアの人口の大半、正確には87.2%がイスラム教徒です。そして、イスラム法において、ワインのようなアルコール飲料は“ハラム”つまり禁止されています。しかし、少し考えてみてください。インドネシアの総人口は2憶6400万人です。イスラム教徒ではない人口は12.8%と少ないですが、それでもざっと3400万人はいるのです。そして、2憶3000万人のイスラム教徒と呼ばれる人達全員が積極的に宗教に参加しているわけではありません。つまり、お酒に対してもそれほど強く反発しているわけではないのです。

更に、イスラム聖法が施行されているアチェ州以外では、インドネシアの法律は宗教的なものではありません。つまり、飲酒は違法ではなく、ただ飲酒をしたからと言って法的に罰せられることはありません。

しかし、ラマダンの最中は少し話が変わってきます。この期間は、アルコール飲料の販売や消費を法律に基づかずにに禁止し、質の低いバーやビリヤードクラブを取り締まる宗教的なコミュニティもあるようです。しかし、このような場所はワイン市場のターゲットではありません。他方、地域によっては条例によりバーやクラブの営業時間を制限したり、ラマダンの期間中は一時的に営業停止にしたりしているようです。

注:ラマダンの期間は、ワインを宣伝したり販売したりするのには適していません。

2. インドネシアは東南アジアで最も急成長している経済地域の一つ

インドネシアではワインは嗜好品とされており、このようないわゆる発展途上国と言われるような地域でワインを販売することに疑問を感じているかもしれません。しかし、2019年のインドネシアの経済成長率は5.1%で、東南アジアで最も経済成長を遂げている国のひとつなのです。中流階級と言われていた人たちは上位中流階級に、そして上位中流階級と言われていた人たちは上流階級になりました。さらに、2018年までに都市化が55.33%まで進みました。このことから、インドネシアの消費者は高い購買力があり、徐々に都市生活スタイルに慣れていてきていると言えます。ワイン販売業者にとって、これは絶好の機会であると言えるのです。

3. インドネシアの人達は社会的地位をとても気に掛けている

すでにご存じかもしれませんが、東洋文化では、自分が他者にどのように評価されているのかを気にし、他人の注目を浴びようとします。自身の社会的地位を向上させるために圧倒的な経済力があることを見せつけるよりももっと印象的な方法があるでしょうか?高級品を買うことのできる経済力よりもほかに明らかに自身の経済力を示すことのできる方法はあるでしょうか?

ちなみに、家や高級車やブランド品を購入したり、より多くの国に旅行した経験がある、というだけではありません。上位中流階級のコミュニティでは、ガラス張りの戸棚いっぱいに高級酒が並んでいることも社会的地位の証になるのです。そして、ロマンティックなディナーや行事における家族の集まりなど、その時々にワインを嗜むというのも社会的地位の証のひとつなのです。

4. EUインドネシア間の貿易戦争に関する見通し

インドネシアでどのようにワイン市場に乗り出すか:実用ガイド
Credit: Tom Fisk

2019年の末に、ロイター通信は“European Liquor Off the Menu in Indonesia as Trade Row Escalates”というタイトルの記事を発表しました。記事の内容を要約すると、欧州連合(EU)はパーム油の環境への悪影響を指摘し、輸送燃料としての使用を取りやめる考えを示したのに対して、パーム油主要生産国であるインドネシアはこれを脅威に感じ、ヨーロッパからのアルコール飲料や乳製品の輸入制限を始めたと言うことです。しかし、インドネシアの商業省はこの記事を否定し、輸入許可の承認の遅れは市場傾向のせいであると反論しました。

ヨーロッパのワイン販売業者であれば、この出来事は懸念すべき事態かもしれません。さらに、正式に輸入制限が行われているのかも気になるところでしょう。この貿易戦争は2017年に始まり現在まで続いているのですが、ヨーロッパ産のワインが2018-2019年時点において未だにインドネシアで見かけることに疑問に感じるかもしれません。ここでは少し違った角度からこの問題を見る必要がありそうです。

まず、インドネシア政府は割当制度を採用しているため、輸入制限というのは正式ではないようです。インドネシア政府は現在、価格交渉を有利に進めるための戦略としてヨーロッパ産ワインに単純に割当をしているわけではありません。次に、2018年度のヨーロッパワインの割当は既にされており、ワインのストックが2019年中ごろまでは十分にあるため、ヨーロッパ産ワインを探すことはあまり困難ではなかったと言えます。しかし、2019年の終わりごろには、多くの輸入業者はヨーロッパ産ワインのストックが底をつき、その時点から闇市が行われるようになったようです。2019年以降のヴィンテージがついたヨーロッパ産ワインは明らかに闇市で取引をされたものです。

問題を解決するため、インドネシア政府は世界貿易機関(WTO)に紛争解決の申し立てを行いました。つまり、貿易戦争の問題は、インドネシア政府とEUが合意点に到達するまでの一時的な問題であると言えるかもしれません。そうであることを願っているのですが・・・。ここで、いくつかお話しておくことがあります。

ヨーロッパ産ワインの販売業者の方には、全てが落ち着くまではインドネシアを次のターゲット市場とするかどうかの判断を保留にしてほしいと思います。インドネシアの他にもタイやベトナムなど、東南アジアには次のターゲット市場にしたい国はたくさんあるかもしれません。でも、マレーシアには注意が必要です。マレーシアもパーム油主要生産国のひとつなのですが、今のところ、EUの動きに対してはインドネシアほどの反発はなく、ワインの輸入に関する制限もないようです。ヨーロッパ諸国以外のワイン販売業者、特にオーストラリアの販売業者にとっては、これは絶好のビジネスチャンスなのかもしれません!

5. インドネシアにおける飲酒規制

インドネシアにおけるアルコール飲料の輸入、流通、販売は、商業省の省令第25号(2019年)によって規制されています。アルコール飲料は以下の3つの区分に分けられます。クラスAは5%以下のエチルアルコール及びエタノール(C2H5OH)を含むアルコール飲料、クラスBはアルコール度数5%以上20%未満のアルコール飲料、クラスCはアルコール度数20%以上50%未満アルコール飲料が含まれます。ワインはクラスBに分類されています。

この制約により、アルコール飲料を取り扱う流通業者、販売業者、輸入業者はビジネスを行うにあたり、貿易許可証が必要になります。クラスB及びクラスCに分類されるアルコール飲料の生産、輸入、流通は地域政府によって統制が行われています。商業省によって許可された登録輸入業者だけがクラスA、B、Cのアルコール飲料を輸入することができます。さらに、流通業者や輸入業者が販売を行うことは禁止されており、輸入業者は飲料流通業界において少なくとも2年の経験を有していなくてはなりません。

アルコール飲料の販売が許可されている場所は、観光法による基準を満たしている三つ星以上のホテルやバー、レストラン、もしくは免税店に限られています。そして、アルコール飲料を販売するための貿易許可証を取得していなくてはなりません。さらに、このようなアルコール販売が行われる場所は、礼拝場所や教育施設、病院などの近くに造ることはできません。21歳未満へのアルコール飲料の販売は禁止されています。

インドネシアにおいてワインを売り出すための実用ガイド

1. 都市部に狙いを定める

ワインは嗜好品として扱われているため、上位中流階級および上流階級の人々、海外旅行者、そして地元のワイン好きのコミュニティをターゲットに、三つ星、四つ星、五つ星ホテルにワインを売り込むのが良いでしょう。ジャカルタ、スラバヤ、バンドン、バリクパパン、マナド、マカッサルなどの都市部もワインを販売するにはおすすめの場所です。

2. バリに狙いを定める

インドネシアでどのようにワイン市場に乗り出すか:実用ガイド
Credit: Cassie Gallegos

バリは、その文化、食べ物、景色など、海外観光客にとってはとても魅力的な場所です。2019年には、750万人の海外観光客がバリを訪れました。ワイン市場にとって、海外観光客は適切なターゲットになりますので、優先市場リストには、是非バリを載せておいてください。

3. 休暇シーズンをうまく利用する

ワインはお祭りやお祝い行事などと関連があり、売り上げを伸ばすためのとっておきの方法のひとつは、ホリデーシーズンに宣伝をすることです。ワインを宣伝するのにおすすめの家族行事は、大晦日や春節、クリスマスです。ワインはロマンティックなディナーには欠かせないお酒ですので、バレンタインもワインの宣伝をするには良い行事だと言えます。賑やかなモールなどで、祝日をテーマにしたイベントや博覧会を行い、ワインを宣伝したり販売するのもいいでしょう。是非、割引やまとめ売りも行ってみてください!

4. ワインラウンジをオープンする

ジャカルタのような大都市でワインラウンジをオープンさせているワイン流通業者が増えてきています。このようなラウンジは、上流階級の人々にとって新たなくつろげる場所となってきています。このような場所では、ワインとよく合う高級ステーキのような豪華な食べ物も振る舞われます。さらに、特別会員やデリバリーサービスなどの特別な特典ばあれば、さらに顧客を引き付けることができます。

5. 購買層に十分な情報を提供する

ワインに関する情報を広めたり、テイスティングのプログラムを造ったりする大手のワイン流通業者も出てくるでしょう。情報を提供することで、購買層の信頼を得、ワインを購入してくれる人が増え、さらに新たな顧客を得られる機会が増えるのです。

6. ソーシャルメディアを利用して商品を宣伝する

インドネシアは、インターネット使用者が世界で最も多い国のひとつです。2017年12月の時点で、1憶4330万人のが積極的にインターネットを使用していると言われていました。このうち、一日に4-7時間インターネットを使用している人は29.63%、一日に7時間以上インターネットを使用している人は26.48%という結果でした。TVのコマーシャルを通してアルコール飲料を宣伝することは禁止されていますので、手の上で簡単に操作できるソーシャルメディア上で宣伝を行うのが最善の方法のひとつだと言えます。売り上げを伸ばすために、オフィシャルアカウントを作成し、プレゼント企画を行ったり、インフルエンサーを起用し宣伝をしてみてください!

7. 異なる種類のワインを造る

購買層を増やすために、他にも様々なことが考えられます。まずは、安価なワインを造ることです。最も売れているワインは、200,000-500,000インドネシアルピア(15-35USドル)のワインです。

次におすすめなのが、聖餐用ワインを造ることです。インドネシアには11,000程のカトリック教会があり、全て合わせると61,000もの教会があります。そして、これらの教会では毎日、もしくは毎週ミサが行われます。いい取引ができれば、教会は素晴らしい顧客になる可能性があります。

ノンアルコールワインを造ることも考慮してみてください。コンビニ、スーパーマーケット、大型スーパーなどではアルコール飲料の販売が禁止されていますので、アルコール飲料製造会社、特にビールの製造会社は、ノンアルコール飲料の開発を行いました。ノンアルコールワインを造れば、スーパーなどで販売することが可能になり、新たな市場の開発につながるかもしれません。

8. 法律、規則、そして政治的状況を常に把握しておく

これは、ビジネスを長く続けていくためには非常に重要なことです。アルコール飲料の業界は非常に厳しい世界です。失敗したり、更には逮捕されたりはしたくないですよね。柔軟に、透明性高いビジネスを行い、しっかりとルールを理解してください。ルールを理解すれば、最大の利益を上げることができるはずです。

どう思いますか?

Judith

執筆者 ジュ―ディス

インドネシアにあるジョグジャカルタ市在住で楽しく日々を過ごしているワイン好き。様々な新しい味に挑戦するのが好きで、最近は、トロピカルフルーツやスパイスなど地元の食材を使い自家製ワインを造っています。

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